週刊 石川雅之

「もやしもん」で一躍有名になった石川先生の短編集。
この短編集を読んで俺が凄いと思ったことは一つ。
絵が全然変わってない!多少の変動はあれど、ほとんどもやしもんと同じじゃないですか。
こういうヒット作家の短編を買うと、「ええ〜これが昔のこの人の作品か〜」ってなることが往々にしてあります。
富樫先生の「狼なんか怖くない!」なんてその良い例ですね。
で、さっき一つって言ったんですがあれは間違いでした。
もう一つ。全ての短編がなかなか面白い!
大爆笑したりだとか、感動したりとかはしなかったんですが、一つ一つの物語から何かを得られるような気がするんですよ。
構成が凄くしっかりしていて、どの話も読んでいて楽しめる物でした。
短編集ってのは、色々なパターンの話を書かなければいけないため、普通はどこかで似通ってしまうものですが、これはそんなこと全然無かったなぁ。
今回はとりあえず二つの短編を取り出してみよう。
10個目として収録されている、「蛸と凧の話」
これ凄く気に入った。
何かコンセプトは非常に下らないにも関わらず、とても斬新な話の流れだった。
基本的なストーリーは「凧と蛸を間違った」村の人間達が、凧揚げ大会に参加するというもの。
有力な領主が主催している大会で、しかもなにやら注目されてしまっているため、村の人間は何とかして状況を打開する策を模索する。
しかしまあこの必死っぷりに笑った。
色々なやり方を考えてみるけど、全然上手くいかず、最終的には「とんちでごまかす」という作戦に出るが、あえなく失敗。
この壮大な失敗っぷりにも笑った。
そして蛸を見せることになり、つづらを開けるとそれは見事な大蛸。
なにやら宇宙からの使いだったらしく、宇宙船に引っ張られていく蛸。
このオチも壮大ww
素晴らしくスケールが大きく、素晴らしく小さい話ですww
蛸=火星人みたいな、日本人にありがちなイメージを上手くえぐった短編でした。物語ってのは色んな見せ方があるんだと思った。
そして、その次の話、「バス停」
これも凄いなぁ。
蛸の話とは対照的に、これ以上ないってくらいリアルで、日常的な話。
ここまでの書き分けを綺麗にできるのはもう漫画家としての才能だと思う。
芥川龍之介の「蜜柑」のような作品ですね。
「おお!お前も芥川なんて高尚なものを読んだことがあったのか!?」と思った方。
当然ですよ。名作文学を読むのは人としての基本でしょう。
(文学少女シリーズの影響ですが)
最後の1コマがこの話の全てでしょう。
俺が喪服な理由は彼女だけが知っていて、他に何でもないただそれだけの話だ
これにつきますよね。
本当になんてことは無い話。日常のちょっとした1シーン。
でも、ただバス停で偶然できただけのちょっとした人間関係にも、思わぬ深みがあることを示唆しているという感じ。
「袖振り合うも他生の縁」をショートショートにした感じですよね。
とにかく、最近のチャラチャラした漫画家ではこんな話は絶対に書けないと思います。
これぞ石川雅之!な短編集でした。
もやしもんが好きな人は是非ご一読を。
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